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客体化プロセスを変換するには?

仲間がどんどん減っていく! 対処法は「客体化プロセス」を変換すること

共に活動していた仲間が抜けてしまう。
活動していると、仲間が去るのは避けられないことですが、中心で活動を支えている人には、なかなかつらい出来事ですよね。転居や病気など、様々な理由があるでしょう。よくあるのは、「だんだん疎遠になって来なくなってしまう」というパターンです。
仕方のない別れがある一方で、運営的な努力で避けられた別れもあるのではないでしょうか?

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「行けたら行くよ」と言われたときの気持ちって…

「次の集まり、いつがいい?」

と尋ねると、以前はカレンダーを前に「どうしようか?」といっしょに考えていた人が、いつのまにか、

「どうぞ決めてください。行けたら行きますので…」

となってしまう。中心で活動していると、内心「ええ〜っ?」となる一言だ。こちらは「仲間」だと思っていた相手に、ある日、「お客さん」みたいな態度でちょっと距離を取られてしまう。こんな経験はないだろうか?

どんなときに「客体化」が起こるのか?

主体的に活動していた仲間が、お客さんみたいになってしまう、こういうのを「客体化」と言う(客体化の反対は主体化)。なぜ、どのようなプロセスで、「客体化」が起こるのだろうか?

活動の目的が気に入らないとか、他にやりたいことができたとか、はっきりしたケースは別にいい。今回注目するのは、知らないうちにはじまる「小さな客体化」についてである。

例えば、会議机を並べていたとしよう。

その日の参加者は12名。途中でちょっとだけプロジェクターを使いたい。古参メンバーの一人であるあなたは、会議室で机を配置しようとしている。

そこへ早めに何人かの人がやってきて、そのうちの一人が、あなたにこう尋ねた。

「机はどうやって並べればいいですか?」

あなたは、別に「机を並べる係」でもなければ、「その会議の責任者」でもない。ただ、たまたま早めに来ただけだ。そんなあなたに、「机を並べるなら、自分もいっしょに」という気持ちで、その人は声をかけてきた。

回答A(指示型):「縦が2台、横が1台で並べてください」
回答B(相談型):「きょう12名なんです。どう並べたらいいかなぁ」

別に、一芝居打て、言っているのではない。もちろん、古参メンバーであるあなたには、「こう並べればいい」というアイデアがあるだろう。それを「指示」のような形で伝えることもできるし、「相談」することもできる。

早く机を並べるなら、断然、指示型の回答Aだ。さくっと並べて終了! すぐに会議がはじめられる。
でも、「小さな客体化」が起こらないように配慮するなら、相談型の回答Bも捨てがたい。ちょっとしたやりとりで、結論にたどりつけるだろう。

Aさん「ああ、それじゃあ、3人がけだから、机4つをロの字に組めばいいですね」メルマガバナー小 あなた「4つあれば座れるんですけど、◯◯さんが、報告でプロジェクターを使いたいって言ってたんですよ」
Aさん「あ、それなら広い方がいいかな?」
Bさん「この白い壁をスクリーンにしちゃいますか?」
Aさん「コンセントはここでいいかな?」

あなた「届きそうですね。それじゃ、横長に配置しましょうか?」
Aさん・Bさん「そうしましょう」

結果、もしかしたら、あなたが想像していたよりもいい配置ができるかもしれないし、やはりあなたが始めに思いついた配置の通りになるかもしれない。いずれにしても、全く異なるプロセスが展開されている。

気を付けるべきは「小さな客体化」

「指示」を受けると、相手は受け身にならざるを得ない。しかし、「相談」の場合、いっしょに考えて決断する必要がある。

前者は小さな客体化のプロセス。後者は小さな主体化のプロセスだ。この2つのプロセスは、まったく別の意味を持つ。そして、その場での結果は同じでも、一歩下がって見れば、大きな違いを生み出す。

会議机をだれが並べるかなんてどうでもいいだろう、と思われるかもしれない。もちろん、会議机の配置は、ここでは大きな問題ではない。でも、ちょっとした場面で「小さな客体化」が起こると、会議での発言や、また別の場面で、またその「小さな客体化」のプロセスが進行していくかもしれない。

そんなことを繰り返していると、次の会議を決めようとしたとき、こう言われるのだ。

「次の会議の日時? 行けたら行きますので、みなさんで決めてください。」

「客体化プロセス」を「主体化プロセス」に変換する

自分が関係していることが、自分の知らない間に決まったり、進められたりすると、その人は客体化してしまう。これは、瞬間的に起こる。

もちろん客体化しない人もいるが、多くの空気を読んで波風が立たないように行動する人は、客体化せざるを得ない。主体的にふるまうならば、「あれ? いつだれが決めたんですか? 私も担当だけど、知りませんでした」みたいなことを言わなければならない。そこには小さな緊張感が生まれるだろう。(そんなこと、別にどうでもいいと僕自身は思うが、まぁ人それぞれだ。)

ちなみに、空気を読む/読まない以前に、「担当者が関知しないのに、決まっている」という状態は、責任と権限の問題、位置づけの問題、いずれの観点から考えてもおかしい。どこかで越権があるはずだし、責任の所在が明確でなくなっている。こういう客観的な組織の成り立ちを、組織の構成員がしっかり理解することはとても大切なのだが、この話は長くなるので改める。

中心で運営している人が気を付けるポイント

中心で運営をしている人は、「マメに連絡・相談をする」といい。「客体化」しそうな立ち位置の人にこそ、マメに連絡をする。そして、どういう順番で情報が広がれば、客体化ではなく、主体化のプロセスとして展開できるのか、段取りを考えてから情報を広げていこう。同じ情報でも、伝える順番を間違えると、人は瞬間的に客体化してしまう。
例えば、会議に来ない人がいるとする。決まったことを後で伝えれば済むのだが、それは客体化プロセスになる。主体化プロセスにするには、こんな順番になる。

(1)欠席連絡があった人に、会議の前に、電話を入れる
(2)議題を伝え、「ここまでは決めておくけどいい?」と確認する
(3)実際の会議では、「欠席の◯◯さんとは電話で話して、ここまでは決めておくよと、了解をもらっています」と全体化する

例えばこんな手間をかけると(もちろんめんどうなのだが)、会議を休んだ人は、議題を把握しているし、「進めておいてください、お願いします」と自然に言える。会議では、不在の人と会議を進めている人が電話で事前に話し、内容を了解していることを知らされ、欠席者を自然に認知する。客体化プロセス

主体化プロセスこんな例もある。4名のチームがあって、たまたま居合わせた3名で話していて、前回のミーティングでの懸案事項についての解決策を思いついた。さっそく実行して、解決し、そこにいなかった人に「解決したよ」と連絡する。これも場合によっては、客体化プロセス(知らないうちに決まってしまった!)になる。主体化プロセスに変換するには、

(1)不在だった1名に連絡して、たまたま居合わせた3名で思いついた経緯と、解決策のアイデアを伝える
(2)「どう思う?」と意見を求める(それが明確な解決策なら、当然「いいね!」とその人は言うだろう)
(3)メンバー全員で確認が取れたという事実を全員に伝え、解決策を実行する

客体化を食い止めるのは、順番を考慮したマメな連絡・相談、直接のやりとりが効果的だ。これがコツなので、ぜひ覚えておいてほしい。

いつまでも反省したり、罪悪感を持たないこと

一人ひとりが主体的にかかわれる「場づくり」をしていても、人が去って行くことはある。やりたいことが異なる、気持ちが変わった、いろいろな理由があるだろう。去って行く人に、その理由を聞けないこともあるかもしれない。痛みを伴う経験もあるだろう。

人が去ることは、運営に不備があったからとは限らない。中心で運営している人は、なにもかも背負い込まないことが大切だ。不備がない運営というのは、生身の人間には不可能だ。万能な場など、存在しない。他人を幸福にする責任など、あなたにはないのだ。

一度そのことにしっかり向き合ったら、いつまでも囚われないこと。
いつまでも振り返ったり、反省したり、罪悪感を持たっりしないこと。
そして、いまのあなたにできる「最善の方法」をとること。

「場づくり」ができるのは、いつも「いま・ここ」だけ。過去や未来に「場」はつくれない。目の前の「場」への集中。場をつくる人は、このことを忘れないでほしい。

*長田英史のメルマガ「場づくりのチカラ」無料購読

*NPO法人れんげ舎主催「場づくりクラス」

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